あの面白かった鬼死ねから満を持して練り上げた次なる作品に期待を高めつつ読んだらこちらも負けじと面白い。
全三巻という事で、またしても…!?と心配しちゃったけどきちんと主人公が人生にケジメを付けたところでの幕引き。
きちんと終われたようで喜ばしい。
こちらも読んで損は無いですぞ。
さらっと話の発端に触れてみますと、
ひずみという謎の現象により、生物から無機物まで何でも混ざり合う災害が発生する世界の物語
木屋俊郎と野々宮桃子がひずみに巻き込まれた事で事態が動き出すわけですが、
二人が出会って早々に桃子の飼い猫の白粒がひずみに巻き込まれ、彼女は白粒を助けようとしますが俊郎に止められてしまう。
こんな感じで、巻き込まれたところの描写もなかなかにエグイので、僕はこれ見たら全力で逃げ出す自信が有ります。
足遅いけど。
むしろ俊郎が止めてくれた事で逃げ出す大義名分ゲットだぜ!なんて考えちゃいそう。
あぁ…でも愛犬がこうなったらと考えると話は別ですね。
救いの手をガブリと噛んでひずみに突っ込む心意気…ちょいと共感しちゃいます。
案の定なんにもできずにひずみに絡めとられる桃子、そして桃子を助けようと必死の形相で飛び込む俊郎。
ほっとけば良いのにそれでも桃子を助けようとひずみに飛び込む俊郎の心意気…カッコいいじゃないの!
で自然現象に勝てるわけもなくこうなると。
僕は猫の白粒と混ざった俊郎、新名称白郎。
着ぐるみマンになっちゃった白郎はそりゃもうたまったもんじゃありません。
元に戻す方法を探す事になるわけですね。
作中で面白いと思うところはそうだなぁ…
脇役の人達もなかなか濃いキャラしてる所ですね。
白郎は体が著しく変化したので身体検査を受けた場面。
女医にちんちんにトゲトゲついてるよと伝えられた時の心境が顔面のみならず耳にまで現れていますね…
しかし取り乱すことなくグッと堪える白郎…この達観してる感じが好きですね。
ここでナースの佐藤さん登場ですよ。
白郎の発情を心配してるのか期待しているのかわかりませんが、佐藤さんは間違いなく発情中。
トゲトゲか、モフモフか、どちらにグッと来ちゃったのかは謎ですが濡れた目で白郎を追尾し続ける佐藤さん。
その後もちょいちょい登場するけど、何かやらかしそうで目が離せないくらい爪痕残してくれちゃったよねぇ…
因みに桃子は白粒の毛に紛れていた蚤と混ざってる吸血女子になっていた。
桃子とか緩めに描かれてるのに蚤がやたら上手いという…実はかなり描きこめる腕前なのかも?
で、そんな桃子をホテルに連れ込みウハウハーなんて思ってたら頭カチ割られて吸血されちゃったおじさんもなんかおもろいんですよね。
当然、傷害事件として警察に事情聴取されるわけですが、聞いても居ないのに凄く綺麗な目で淀みなく答えるこの感じ…間違いなく常習犯ですわ…。
体操着が普段着の成人女性ってパワーワードまでさり気なくブチかましてます。
許してあげようって思いました。
シリアスの中に笑いを捻じ込むこの感じ、ほのかに懐かしさを感じます。
数々の混ざった人が登場するのも見所ですね。
銃、馬、木、リンゴ、電気、鍋とか混ざるものに制限は無さそう。
そして混ざり方も様々であり、多種多様なキャラが登場する。
面白いのは、精神はどちらかに主導権があるらしいこと。
最終話にも関わってくるこの事情。
見ようによってはもう少し話続けられた気がするので、もしかしたらモヤっとした感覚が発生するかも。
俊郎が目的を達成したので、これ終わりと言われたなら受け入れるしかない気もするんだけど、もう少しなんとかならんかーと思っちゃいました。お寂しい。
ちょっと衝撃的だったのは、鬼死ねのアラタまんまのキャラが一連の騒動の原因ともいうべきキャラとして現れた事ですかね。
えぇ…この顔でいろいろやらかしちゃうなんて。
前作好きならばちょっとモヤっとしちゃう役割でしょうなぁ…。
目を見張るのは二巻の最後の方にびっちりと書き込まれた参考文献の量!
すげぇ…こんなに調べものをするのか…面白いわけだぜっ!
なんて思ってたら、一番最後に作中に登場するフリーライター、鍋谷要の名前を発見。
こいつです。
…もしかして、と思ってタイトルを数点ググってみたけどなんも出てこないんですわ!
あっ…ちっきしょー!やられたっ
ハッタリだったのかよ…!
くっそぅ…なんて思いつつニヤニヤしちゃいましたよね。
よく考えたら、桃子がひずみを元に戻す方法を探す過程で見た作中の参考文献かも。
話の外側で仕掛けられるとは予想外でしたが、この遊び心は嫌いじゃない。
メインの物語は結構シリアスなのに、各キャラが面白く行動する事で楽しく追えるのが良い。
話も佐藤さんも面白いので、これもお勧め出来る作品ですね。
次の作品も待ち遠しい。
なんなら鬼死ねの続きでも良いですね~。