今思えば、表紙はなんというか子供の頃に目にしていた夏空のよう。
これはジャケ買いならぬ表紙買いにござった…
kindleにしてから書店に足を運ぶ機会が減ってしまい…さらには書籍なもんでどの作者が面白いとか自分と合うとかさっぱりわからんようになっていた。
ハードカバーってのもまた敷居が高いのよねだって省スペースにしたくてkindleにしたのだから。
それが気付いたら手元にあるってんだからもうわけわからんですよ。
で、読んだら読んだでグイグイ読まされ一日で全部読んじゃった。
小説を一日で読み切ったのなんて記憶にないような。
う~ん、要所要所で先で何かが起こると匂わされて止まらんようになってしまったのかも。
なんとも上手に転がされたもんであるけど、読了感も清々しいし文句なしですね。
最期は少しチッ…と舌打ちしつつもにんまりしてしまったもの。
僕がこの作品を読んで思い出したるは、自身の少年時代の拙さとひた向きさ…あったかどうか思い出せないけども、かつて自分が生きた世代の空気感。
それをシワシワ、もしくはツルツルになった脳の片隅から取り出してくれたように思う。
これはそんな気分にさせてくれる、少年達の心の成長の物語だ。
いや…うーん…多分彼らのようにキラキラはして無かったはず…
だけども読んだ後、なぜか己の過ごした12歳の夏が無性に愛おしい。
自分がとても良い時間を過ごしてた、そんな気分になりましたよね。
多分実際には鼻垂れてぼけーっと過ごしてた僕が、こんなに良い気分になれるなんてすげぇ。
少年達の夏と勇気にあてられて、僕は今とても良い気分にございます。
で。
他の作品でもきっと同じ読了感を得られるんじゃろなぁ…と思って永遠の0を読んでみましたらば、物の見事に心を抉られてしまった。
読んだ後で何というか、己の中に確固たる芯を持たねば…持ちたいって思わされたんですねぇ
宮部久蔵に縁のある人達、前線で戦った者の口から実態が語られる事でこれまで抱いていた戦争に対する漠然としたイメージが消し飛んだりもした。
毎年8月になると戦争に纏わる作品が放送され、それらの作品を視聴していろいろと知った気になっていたんだけれども…新しい心の部位が傷つけられたような気がした。
戦争ってやつぁ…勝とうが負けようが双方とも心身共傷を負う行為だ。
そんなのしない方がいいに決まってる。
決まってるんだけど、自分の大切なものが理不尽に奪われんとする時に指をくわえてみているの?って思っちゃう。
日本に限って言えば、戦国時代のような争いは二度と起こるまいと信じられる。
でも世界もそうであるとは限らんのよね…綺麗ごとを言いつつもあれこれ難癖を付けて他国を侵略しちゃう理不尽が存在するもんね。
こんな考えが頭をよぎる程のシリアスな物語だった。
なんじゃこりゃ全然雰囲気ちゃうやんけ!って思ったけど、困難の最中で煌く人の心の尊さに胸がズドン打ちのめされる、僕にとってはそんな作品であった。
そしてそして、じゃ、じゃあこっちはどうだ!って次に読んだのがカエルの楽園
カエルだし?楽園だし?こりゃもしかしなくてもハッピーな物語だろ!と、思って読んだらえらい目にあったでござる。
カエルの三戒やらご近所にワシが住んでる辺りで、おやおやおや…これってもしかして?と気付きはじめ、徐々にこの物語が何を言わんとしているのか気付き始め…その後、思い当たる描写が随所に見受けられる事に気付いてからは常にドン引きしつつ読んでいた。
さいごもほんとに後味悪くてうへぁ…というのがこの作品の読了感。
いやほんと、この作品はカエルの生態を良く観察して書かれた作品だと思ったケロ。
うーむ、著作を3つ読んで、3つとも作風が違ってたのはかなり新鮮であったけど、どの作品も己の常識を見つめ直す機会を与えてくれたように思う。
それぞれ違って、それぞれ面白かったですよ。