おけら長屋

本所 おけら長屋 三巻四巻の感想

投稿日:2017年11月7日 更新日:

四巻まで再び読み終えました。

三巻は全体的にじ~んとする話が多かった気がします。
笑撃度はあいかわらず。

今回は笑撃がいまいちだったなぁ…なんて巻があっても油断できません。
全ては次弾の威力を高めんが為…
飛ばさず順序良く読むのが乙だと思います。

そんな四巻はもう、中にとんでもない爆弾が仕込まれていますね。
三巻でちょっと油断させて、四巻で仕留めにかかる作戦だろうか。
休憩時に読み直している時もグフフとかウヒッとか声がでて変な顔になりました。
同僚の視線がまるで八百金を見るかのような眼差し。
普段会社で威厳を誇示してる親方さんなんかは、思い切って会社で読んでみるのも一興ですね。
痴態をさらして弟子の好感度アップ間違いなし!

さて、おけら長屋をお勧めするにしても読めばわかるさ…!としか言いようがない事に気が付いた。
そこで今回は各話がどんな話か?というのをペケジローがいいかげんな解釈をしてみます。

IBC岩手放送のラジオ文庫

ただいま第135回までアップロードされており、なんと朗読を聞く事が出来る事を発見しました!ありがてぇありがてぇ

もし書籍を読むことが困難な、大事な人が居たならば、この朗読を聞かせてあげておくんなさい。
4巻の爆弾てのが気になるな…もし笑い過ぎて具合が悪くなってしまったら…とお考えでしたらご安心を!
危険な回はすっとばされております。
これは僕の推測なんですがね、きっと朗読できないんですよ。
僕もあの話ばかりは4回程読み直してるんですが、毎度変な声が出てしまう。
とてつもない破壊力を秘めたシーン、それが続くのです。
あれを真面目に朗読しなければならないなんて無茶にも程がありますからね…。

 

三巻

その壱 うたかた

恋に落ちた魚辰、背後に迫る万松。
みのるかどうかはお楽しみ。

感想
辰次が端歌を歌う場面では心が無になったように書かれてはいますが、きっと色んな想いが籠っていたのだろうなぁと思います。
八五郎が万松に辰次が恋をしたと教えたために、当然発生するお節介焼き。
どちらかと言えば笑いの方向に突き進む傾向にあるこのお節介。
面白いけど辰次には笑えない展開が有りました。
それで責任を感じたのか、八五郎が辰次に敵は討ってやるからそれで二人を勘弁してやってくれと言う。
その敵討ちってのがまた粋なものでして。
目には目をってやつですね!しかも何故この方法を思いついたかといえば八五郎も思い知ってるわけです。
万造、松吉、辰次、八五郎、皆で同じような気分を味わった事になるじゃないか!と気付いたらなんかじ~んとくるじゃありませんか。
さらに、八五郎達が習った端歌を引退する親方の餞にと披露した事で起きた事態が物凄い。
親方の一言でどれ程の状況だったのかが目に浮かびます。
やっぱりこの人達は面白い!

その弐 こばなれ

家柄にこだわる教育ママさん VS お侍ではなく別の職に就きたい子供
鉄斎先生やっぱりすごい。

その参 あいえん

お糸ちゃんが恋をする清らかなお話の陰で蠢く長屋の野郎共

感想

八五郎さん、真面目にやってるんだけどなぁ…。
お糸ちゃんが古着の袖から発見した手紙、それを書き写しただけであの騒ぎですからね。
笑いの神が憑いてるとしか思えない。
でも所々に表れる八五郎の父の顔がかっこいいんですよね。
お糸ちゃんの結婚相手に関しては、この男は天晴れだと思う男を見つけ出せと言うアドバイス。
これはシンプルでありつつも核心をついた優秀なアドバイスだと思うのです。
最後のほうでは八五郎一家の、父母娘の日常風景が見られる。
とても良いシーンです。
居酒屋で万造達と女郎に会う役目を掛けた時の光景もまた今回の見所であります。
娘が見たら泣くぜ八五郎さん…という姿を晒してくれます。

その四 ふろしき

『父であろう』とする久蔵がメイン。万造大活躍!
そしてお上に通ずる長屋の心意気がまた乙な話であります。

感想

読んでないと意味不明なことろがあるかもです。

万松の久蔵への御祝儀の渡しかたがなんとも彼ららしい。
好感度がstop高を記録しそう。
そして妻子を想うあまりに間違いを犯した久蔵への言葉。
心からの言葉が胸に染みました。
好感度が限界突破しそう。
このさき万造が悪事を働いたとしても、最後まで信じようそうしよう。
久蔵の子、亀吉への贈り物は長屋の皆が持ち寄った端切れを集めて布団にしたもの。
皆に想われ送られた品、なるほどプライスレスとはこのことです。
しかし締めのほうで何故か七寿丸への贈り物になってました。
これは僕の考えなのですが、久蔵おとっつぁんが亀吉の為にと一生懸命頑張って考えた七寿丸への祝いの品、それは我が子亀吉に送られたのではないかと思います。
贈ろうとしてた相手は違っても、あれには亀吉へのおとっつぁんの愛情がこもってるから。
もしかしたら何処かにそういう場面があったかもですが、だいたい笑撃でぶっ飛んでるのでご勘弁

その五 てておや

クールな女医志望お満さんが登場。あったその日から万造とは犬猿の仲であり万造もたじろぐ存在感にちょいとしびれる。

万造が悪戯心からのファインプレー。
あれが無かったら上手くいかなかったに違いない。
三巻で一番笑ったところ。

感想
お考さんの母、お軽さんについて思う事があるのです。
徳兵衛さんが言っていた通りの美人局では無かったような気がしています。
徳兵衛さんがおけら長屋の大家になったのを知ってから姿を消したとして、お考さんにかなり確信に迫る遺言を残してます。
これは、徳兵衛の事を気にかけて近況を知っていなければ残せないのではないかと。
そして徳兵衛さんは当時の事を連日の朝帰りと振り返ってますが、美人局なら必ずしも関係を持つ必要は無い。
難癖を付けることさえできれば任務完了です。
と、いうわけで徳兵衛との蜜月に突如現れた銀蔵は、お軽さんにとっても衝撃的だったのではないでしょうか。
恐らく元彼的存在な銀蔵のしつこさを知るお軽さんは、これ以上徳兵衛に被害が及ぶのを避けるためにどうにかして銀蔵を江戸から遠ざけたのではないでしょうか。
徳兵衛との将来を失い、飲まねばやってられぬという事での酒浸り生活とも思えます。
生涯決まった夫を持たなかったというのも、徳兵衛への想いが強かったのかなぁなんて思ったり。
お考さんへの遺言で、彼女を徳兵衛に会わせようとしたのは彼女への励ましという以外にも、徳兵衛に娘を見せたいという気持ちもあったとしたら。
徳兵衛親子のお軽さんに対する認識がちょっと悲しい。
しかし、過ぎた事に言い訳をしなかったお軽さんは、とても強い女性であったのだと思います。

お満さんと父親を和解する知恵を捻る万造。
この形に入った万造はそっとしておけという松吉。
この場面が面白かったですね。
実際、万造の考えた方法で良い結果が生まれました。
ついでの余興も効果抜群だったし。
しかし、なんと素晴らしい!とばかりは言ってられません。
松吉の言い方からは『信頼と実績の万造・思案の形』で有ることが感じられます。
何故あんなに信頼しているのか?
恐らくは何度もあの型を見ているからでしょうねぇ…
そしてなんの為にあの型になったのか?
そういえば、ふんどしという話で彼らは八五郎達に自分達が望む言葉を言わせてるんですよね。
相手の自尊心をくすぐりつつ言質を取るという、見事な話術だった…。
つまり以前から僕らの知らない所であのようにアイデアを捻り出していたわけです。
悪知恵の。
型が鍛えられたのがそのせいだと思うと、締めの良い雰囲気もなんだか面白く思えます。

四巻

その壱 おいてけ

突如始まるサスペンス劇場。
河童にびびった松吉と万造の熱い友情。

感想
今回も万造は僕らの知らないところで知恵を練ったようで、まんまと八五郎さんが乗せられる。
そして惜しいところで気が付かない。
八五郎さん…即興で二人そろって歌えるわけがねぇよ…。

河童と遭遇した時の松吉が思わず万造の背中を押したというのは…
びっくりして押したのかも知れないけど僕がびっくりしたわ!
友情ってのは時に熱く、時に儚いものなんだなぁ…。
万造がビビりすぎてその辺りには気付かなかったのが不幸中の幸いですね。
彼らには今後も仲良くしていて貰わねば面白くありません。

締めの部分の御奉行の裁きが大岡裁きに通ずる程に乙でありますね。

その弐 あかいと

続・お糸ちゃんの恋。かと思いきや…赤い糸はもう一つあるのかもしれねぇなぁ…

感想
周囲にはバレバレな文七とお糸ちゃんの想い。
しかしご当人達はモジモジしてて一向に事態は進展しない。
それを長屋の皆がそれとなく応援していく様子が何とも素敵なお話でした。
一方、万造と文七への接し方の落差がすごい。
お笑い芸人と有名俳優くらいの差を付けられる万造がちょっと不憫だった。
万造自身もあの状況をオイシイと思ってたのかもしれないけど。

赤い糸がもう一つ、と言ったのはお満さんと万造。
しかしこの糸、今は繭から糸へと少しずつ変えられているところではないかと思います。
登場時と今回とでお満さんの態度が少しずつ変わっていってるような…。
と、いうわけでお満さんと万造にも注目してみると面白い回です。

締めの部分はとても良い雰囲気で思わずにんまりしてしまう。

その参 すりきず

かんおけ にて出てきた名もなき女スリのお名前判明。
そして始まる捕り物帖。
鉄斎先生は気付いているのかどうなのかが気になるところ。

その四 よいよい

四巻までで一番危険な話です。
10ページに渡って繰り広げられる、全米が驚愕する程の乱痴気騒ぎ。
天狗のお面の使用法が編み出されたのはおけら長屋だった。
もしドラマ化されるなら錦之介役は誰が良いか…
これを演じきったら伝説になるだろうなぁ…
長瀬智也『阿波でーす』うーむ…天狗の面はやはりまずそうです。
生田斗真『阿波でーす』うむむ…土竜の唄ですでに体当たり演技をしてましたね。これ以上は危険かもしれない。

山田孝之『阿波でぇ~す!』あっ…これだ!なぜだかわからないけど、普通に演じきってしまいそうな凄みを感じる。残る問題は股関に天狗の面が放送出来るかだけですね。

感想

よいよいにて大暴れしてくれた、若芽錦之介。
普段はどう考えても出てくる作品を間違えたのではないかと思うほどの好青年。
夢見勝ちな女性が『運命の人とぶつかる』なんて易者に言われてぶつかったのがこの人だった。
ぶつかったのが金太だったら早々に夢から覚めたはずなのに、錦之介だったものだからさらに夢中になる始末。
と、いうことは見た目もかなり格好いいのでしょう。
運命の人なんて言われたら、万造だったら迷うことなくその話に乗っただろう。
しかしこの好男子、話をはっきりさせようとする。
身も心も好男子でさらに腕も立つとなれば、間違いなく別の作品で主役をはれる逸材。

だが、酒を飲むと豹変するようで、その失敗が原因では江戸に出てきた。

そしてごく自然な成り行きで万松と遭遇。
強引に酒を進められて舌を濡らし、一口飲み、がぶ飲みし…酔った錦之介の真の凄さを目にする事になったのです。

万造のみならず八五郎さんまでチビる程の狂乱、今でも人前では読めません。
恐らく、序盤で錦之介と一緒に飲んだご隠居も同じ経験をしたのでしょうなぁ…。
確かに、顔を見たら泣いて勘弁してくれと言いそうな騒ぎである。

目を覚まし、己の失態を聞き悄気る錦之介。
そんな彼に八万松が次は安全に配慮するから、また飲もうと言います。
あの騒ぎの後で…なかなか言える事ではないはず。
おけら長屋の皆さんは多分、欠点よりもその人のいい部分に目を向けてくれるのでしょう。
酒宴に目を奪われ勝ちでしたが、改めて読んでみれば万造達も格好良いところがありました。チビったけど。

その五 あやかり

松吉の内面を知ることが出来るお話。
やっぱり犬だ猫だと言われても

一度絆が生まれたからにはもう家族なんですよねぇ
松吉を慮る万造、問われて正直にあいてぇと答えるのもカッコいい。
どうしてこの二人がモテないんだ!
…まぁなんとなくわかる。

感想

ある日突然松吉の元に現れた子猫のミーちゃん。
前から思ってたけどネーミングセンスが素晴らしすぎな松吉さん。
結構言葉使いが強めなのにミーちゃんて。
万造もごく自然にミーちゃんと呼ぶのでちょっと微笑ましい。
ミケとかタマと名付けそうなイメージでしたが、ミーちゃん。

あっちへ行きやがれーと頬擦りしたり抱き締めたり。
江戸にもツンデレというものが…たしかにこれは盲点です。
有ったに違いないが、まさか松吉さんに見せつけられるなんて。

ミーちゃんの素行を注意されると穏やかではいられない程に可愛がる様子も意外な一面でした。

そして揉める彼らの目の前でメザシを盗んで立ち去るミーちゃん。

猫も飼い主に似るんですね~。

よいよいでは松吉さんがあちこちから食材を調達して見事な酒の席を儲けてましたっけ。
あと、笑いのタイミングの良さもまさに飼い主譲り。

猫のミーちゃんに対する愛情の深さから察するに、松吉さんが家庭を持ったら化けそうな気がします。
万造さんも一時的とはいえ、勘吉のおとっつぁんとしてきちんとした生活をしていたし。

このふたりが家庭を持ったなら…なんて考えると…

詰まらなくなっちゃいそうなのと、謎の敗北感を心に刻まれそうなので当分は独身で居てもらいたいです。

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