当然二巻も面白くて笑えるのは当たり前、
だから感想でおもしれぇおもしれぇと書いてたら八百屋の金太になってしまう。
なのでこれはと思ったお話の感想を書いてみようと思います。
各話のタイトルはご覧の通り。
一言だけ、印象に残った言葉を添えてみます。
- その壱 だいやく
寛次『お、おつむてんてん。』
- その弐 すていし
松吉『頼まれなくても、やっちまうのが江戸っ子ってもんですから』
- その参 まよいご
万造『あたりめえよ。こちとら江戸っ子でえ。心で泣いて顔で笑うのよ。』
- その四 こくいん
京太『おいらもだ。もう、どこもいたくねえ。』
- その五 あいおい
八五郎『為よ、相老いって知ってるか』
- その六 つじぎり
佐平『糠漬けが喰いてえなあ。古漬けの萎びた茄子に、ちょいと唐辛子なんぞをかけてよ』
まずはぶっちぎりでその参 まよいごであります。
これまで滅茶苦茶な事を言ったりしたりでいろいろ楽しませてくれた万造ですが、
今回は彼の温かな本質に触れることが出来る。
ここを読んだらばきっと万造が好きになるし、
長屋の連中と同じ気持ちを得ることが出来る、そんな話だと思います。
困った事をしてもどうも憎めないってのは、彼の人物を知ればこそなのでしょう。
さて、ちょっと内容に触れるかも知れません。
作品を読んでみたいと思ったならばご注意です。
ついてねぇなんて言いながらも迷子の勘吉を連れ帰り、なにかと面倒を見る万造にまず感心。
後に良い人に見つけて貰って、と言われていることから、なかなか出来る事ではないはず。
その後、一緒に勘吉の家を探しだし、両親に引き合わせた時の万造の涙。
なんで涙がでたのか自身でもわからないと万造は言うけれど、
自分が捨て子だったことから、勘吉に自身を重ねていたのではないかなぁ。
本当の親を知らないために、親というものに憧れを抱いてたのかも知れない。
きっと、温かいもんだろう、優しいもんだろう、絶対にいいもんなんだぜ、
なんて思いながら、嬉しく思いながら親の元へ連れて行ったに違いない。
しかし、繰り広げられた光景は万造の想像とはかけ離れたものだった。
万造の親を想う気持ちも、勘吉と一緒に頬を叩かれたように感じたのだと思えてしまう。
勘吉の家の近所の住人に勘吉の置かれた状況を教えて貰い、ショックを受ける万造。
怒り心頭だが親子の問題と言われれば手が出せない。
酒を飲んでも酔えぬほどに勘吉が気がかりな万造。
長屋の皆も心配するほどだ。
そんな万造のところに、夜道を歩いて勘吉が帰ってきた。
親元から家出して来てしまった事から、ちょっと問題が有りそうなところだが、
そんなことは気にしてられない。素直に良かったと思ってしまう。
勘吉を養子にすると決意した万造は、大家に人別長を書き換えろと迫る。
そんな簡単な話では無い、鉄火場と吉原通いをやめられるのか!
などの現実的な事を数多く言われての冷静な自己分析により一度は断念。
流石に僕も一緒に怯んでしまった。
万造には無理だもんなぁ…
なんて思ってたら、長屋の皆からの援護が。
これで決意が固まった万造が、涙を流して大家に頼み込む姿に、
綺麗な涙よなぁ…と見てもないが思ったものだ。
長屋の皆に親愛の情を感じる。
出来る事なら恩返ししたいくらいだ。
その後、勘吉と暮らすことになった万造は人が変わったようだ。
勘吉目線の物語では、その小さな胸に感じてる温かな気持ちがちゃんと伝わってくる。
長屋の仲間に助けられながらも共に暮らす姿はとても優しい光景だ。
そうか、長屋の仲間が増える話か。
とはならなかった。
鉄斎先生が、勘吉の本当の親に心当たりがあると来た。
鉄斎に、勘吉の父親と思われる人がどんな人物かを確かめる万造。
なによりも勘吉の為、というその心意気。
万造、立派なおとっつぁんになってた。
その後、寂しさをぐっと堪えて、勘吉を諭す万造が格好いい。
最初から読んできて、長屋の皆を見てきて良かったと思う。
あまり感想にはなってない気がするが、
水を差す事になりそうで恐れ多い。
出来る事なら多くの人に見てもらいたい話ですね。
それで、
どうだ、万造の涙は綺麗であったけぇだろ。
と自慢したい気持ちでいっぱいです。