一話目から飛ばしてる印象の第五巻。
今まで読んできた人にとっては、そういえばそんな事があったなぁと思う出来事もちらほら出始めます。
おけら長屋の住人とも長い付き合いになってきて、まるで一緒に長屋で暮らしてるような気分。
その壱 ねのこく
売り言葉に買い言葉で、八五郎さんがだるま長屋対おけら長屋の肝試し対決を受けてきてしまった。
しかしビビりなこの三人、自分は絶対に出たくない。
そこで選ばれたのが勇者八百金です。
金太の勇気ある行動から目が離せない!
…金太は万造達にいいように騙されただけ…
だが金太と鋏は使いよう、今回の金太は斬れぬものの無い鋏、いや名刀と言っても差し支えない程の切れ味を発揮する。
知らぬが仏という言葉が生まれたのは恐らくこの瞬間。
『おいてけ』では河童が現れなかったので、今回も幽霊が出るわけ無いだろうと思っていたら出た。
後日万松鉄斎の三人で飲んでいたら話の流れで幽霊の事が気になりだし、話の流れでイタコの婆さんに幽霊と話をさせてもらおうという事になる。
イタコの婆さんから実は幽霊憑いてましたと知らされた時の反応や、幽霊に肝試しの様子が面白かったなんて言われた場面では思わず笑ってしまった。
そして幽霊になった経緯を聞いた彼らはいよいよ本領を発揮する。
おけら長屋の連中のお節介が、多くの人を助けてきたのを見てきたけれども、今回は幽霊の成仏に手を貸すというのだから恐れ入る。
幽界にまで手を回すとは…
幽霊になった経緯を聞かされて、本気で憤る万松。
やっぱりこいつら粋だなぁ…
その弐 そめさし
おけら長屋のお染さんによるお節介。
お節介も楽じゃないんですねぇ。
おけらのお節介、まさかの空振りな回。
あんなに情熱的に悩みを打ち明けてた当人達が最終的にそれぞれ現実的な選択をすることで、それまで一生懸命頭を捻って事態を解決しようとしていた苦労がぱぁ。
お節介を焼くってのは難しいものなんだと知ることが出来る話です。
これまでいろいろ解決してきた彼らが凄いんだな、とも言えます。
しかし、今回の依頼人?はちょっと羨ましいやらけしからんやらでお染さんの気持ちもよぉ~くわかります。
その参 はるこい
かつて島田鉄斎が剣術指南役を務めていた陸奥国黒石藩に関わる話。
黒石藩江戸詰めの尾形清八郎と、家族が生きるため吉原に来なければならなかったお葉。
万松の悪戯というか運命の悪戯によって、出会ってしまったこの二人。
こんなことあっていいのかよ…と思っちゃうくらい悲しい展開。
家臣の話を聞き、高宗はお葉と話をすべく万松へ女郎屋へ連れていくよう依頼するのですが、やはり高宗が本物であると知らない彼らのやり取りは面白い。
お葉の話を聞く場面はとても悲しいものですが、涙を流しつつ彼女の話を聞く高宗に微かな希望を感じます。
どうか立派な藩主になってほしい。
いつか藩の財政が好転し、民が哀しい思いをせずに済むようになった話が見たいものです。
今回は相も変わらず自由奔放愉快痛快な万松に救われた気もします。
その四 まさゆめ
色々有ったがそれでもやっぱり家族想いな久蔵のお話。
財布を拾って届けたらお礼に一両貰ったなんて夢を見た久蔵さん。
そしたら本当にその通りになって…次はどうなる?というお話。
富くじで五百両当たると思い込んだ久蔵がかわいそうな話ですね。
大黒様が夢に出てきて明日くじきっと当たるなんて言ったら本気にしちゃうもんなぁ。
そういえば当たったら亀吉の為に長屋を出ようなんて考えてたっけ。
亀吉の教育に万松がよろしくないなんて考えてもいたなぁ…
万松には結構うれし泣きさせられてたと思うんですが。
久蔵さん、お金が手に入ると思ったとたんに長屋をどんどん貶め始めるなんて…やっぱりお金って怖い。
そう考えると落ちもそんなにかわいそうじゃないかも。
最後はフフッっと笑ってやりましょう。
その五 わけあり
おけら長屋のお笑い女性陣の一柱、お奈津さんの過去とそれに纏わる話。
お熊婆さんといい、お奈津さんにお染さん、皆色々あって今がある。
喜四郎の男っぷりもなかなかに素晴らしい。
ゲストの為に誰かが二人で一部屋に住んで部屋を開けねばならない。
その話し合いの様子がなんとも面白かった。
候補にあがった万造と松吉。
相模屋の隠居は小言を聞きたくねぇ、
金太は馬鹿がうつるじゃねぇか!
辰次は朝は早いし魚くせぇのがうつるじゃねぇか!
テンポよく断り続ける万松に、大家さんが畳みかける。
それならお前らで暮らすしかないじゃない。
だいたいいつも一緒にいるからいいじゃない。
ここであっさり引く万松ではありませんでしたが、見事としか言いようがない。
自分たちの威力をきちんと把握していなければあの言質は取れないでしょうな。
自覚を持った外道と言えばいいのかどうか、兎に角人生楽しそうで何よりだ。